新鉱石ラジオ開発ものがたり

■アンプを内蔵する・・
子どもの頃も大人になっても電源不要でラジオ放送を受信できる鉱石ラジオは、確かに摩訶不思議な魅力がありますよね。経験した人にとってその時の感動は、忘れ得ぬ想い出となって心に残っていることでしょう。まさにノスタルジーです!
コイルやアンテナを工夫して、何とか感度を上げようと際限無く研究を続けてこられた多くの先達に敬意を表します。(平伏)
しかし「聴こえなければ、ただの箱」ということわざ?があるように、貴重な鉱石ラジオも聴こえなければ意味が無いと思うのです。

私も、ある程度鉱石ラジオの感度と選択度の向上に努力を続けて参りましたが、
あ〜る日突然♪
「良く聴こえる鉱石ラジオにするためには、増幅するしかないんだ!」
と言う結論に達した訳であります。
それも、最もシンプルなトランジスター1石を使った低周波増幅回路に決めました。
するとどうでしょう!
なんと良く聴こえるでは、あ〜りませんか!
増幅しているんですから、当たり前といっちゃあ当たり前なんですけどね・・(汗)
でも、わずか1.5Vの電源でこれだけ聴こえるなら増幅しないと損だと言う気持ちになりました。(笑)

「できた〜!アンプ付きの鉱石ラジオを見て!」
私は新作が出来ると、いつも家内に持って行って見せびらかすクセがありました。
勿論、彼女は全く興味を示しません。
ラジオを聴きもせず、彼女は言いました。
「それ、電池が減ったら交換するんでしょ?面倒だわねぇ!」
う〜む、そりゃあ そうかも・・・。

■ソーラーセルを搭載する・・
鉱石ラジオを聴く頻度にもよるが、2ケ月に1回か3ケ月に1回、いちいちパネルを開けて乾電池を交換するのは確かに面倒である。
それに私としては使い捨ての産業廃棄物を量産するのは好きではない。それなら、乾電池の変わりになる太陽電池を使えばいいじゃないか!

善は急げ!
早速電池代わりにHOBBY用のソーラーセルを搭載したのです。
私は、また家内のところに持って行った。
「できたで〜、太陽電池やから半永久的に電池交換は不要なんだ」
「晴れの日はいいとしても、雨の日でも聴こえるの?」
「そうやなぁ、やっぱり雨の日は聴こえ難いかなぁ・・」
「夜でも聴こえるの?」
「う〜ん、やっぱり太陽が無いと部屋の灯りでは無理かもなぁ・・」
「それなら、乾電池のほうがマシなんじゃない?」
う〜む、そりゃあ そうかも・・・。

■電気二重層キャパシタに充電する・・
昼はアンプが使えても夜はアンプが使えないというのは、どう考えても理不尽であり製品としては欠陥である。
出来れば何かバッテリーのようなものに蓄電出来ると良いのだが、安価な充電装置等があるはずが無いし、仮にあったとしても複雑に違いないのだ。
充電式のアイデアは、暗礁に乗り上げた形となって時間だけが過ぎていった・・・。

偶然、2015年の夏から(有)TECHNO/KIT様の教材を使って「防災ラジオ製作講習会」を開催することになった。
なんと!
その防災ラジオに電気二重層キャパシタが使われていたのである。
電気二重層キャパシタは、まったく新しい構造を持った大容量のコンデンサーであり、比較的安価で入手可能なのだ。
教材はダイナモを回して充電する方式だったので、ダイナモをソーラーセルに置き換えて実験したところ短時間で充電出来ることが判明した。
昼間明るい場所に鉱石ラジオを置いておけば、自然充電するので好都合である。

実験の結果ソーラーセルを太陽光に当てた場合10分余りで1.5Vに達することが分かったが、蛍光灯電気スタンドの真下では3時間以上経っても満充電にはならなかった。
0.6V以下になると電圧不足で音声が割れるのだが、0.7V以上あれば正常に増幅するので使用上まったく問題はないだろうと言う結論に達したのである。
イヤホンで聴く鉱石ラジオは、消費電流が5〜10mA程度と少ないので防災ラジオに使われている容量の3分の1の電気二重層キャパシタに決定した。

陽はまた昇る!
満充電で10時間以上聴こえる計算なので、夜中に長時間アンプを駆動してラジオ放送を聴いていても明るくなれば また自然充電が始まるのだ。
私は、また家内のところに持って行った。
「出来た〜、ついに完成だ!」
「天気のいい昼間に自然充電するから夜でもアンプで聴くことが出来るし、これで問題ないと思うんだ。ちょっと聴いてみる?」
「ふ〜ん・・・」
彼女が耳にイヤホンを入れた途端、
「ウワァ〜、なんなのこれ!とても聴いていられないわよ!」
イヤホンを受け取って聴いてみると、アンプで増幅したラジオは耳にイヤホンを差していられないほどの音量だったのである。
う〜む、こらイカンなぁ・・・。

■MGC(Manual Gain Control)のボリュームを付加する・・
鉱石ラジオの受信回路はストレート方式なので、信号を一律に増幅すると大きい信号が更に大きくなって耳が痛いほどの音量になります。
この問題を解決するには、低周波増幅回路の入力信号を手動で調節してやれば良いのだ。現在のスーパーヘテロダイン方式のラジオにはAGC(Auto Gain Control)回路があるが、自動に対して手動で操作するのでMGCと命名した。

私は、また家内のところに持って行った。
彼女はうなずきながら言った。
「うん、これなら聴き易いわね!」

苦節3年8ケ月、エコでハイブリッドな完全無電源の新鉱石ラジオは、こうして誕生したのである。
                      ー おしまい ー

※新鉱石ラジオにはAFアンプを内蔵していますので、地域によってはアンテナ線を繋がなくてもラジオ放送を受信できる場合があります。適切なアンテナとアースを工夫してお楽しみください。電気二重層キャパシタは、最初は電圧がゼロボルトですのでソーラーセルに太陽光を10分程度当ててからアンプをご使用ください。




sasuke@io.ocn.ne.jp

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